ビタミンDと妊娠高血圧腎症 – solar-d

2024/07/29

カテゴリー:STUDY

ビタミンDと妊娠高血圧腎症

妊娠高血圧腎症は妊娠中に発症する多臓器疾患であり、高血圧と蛋白尿を特徴とします。全妊娠の約3~8%で発症し、母体と胎児の罹患率や死亡率の増加と関連しているほか、子供の心血管疾患や腎疾患の高い発生率とも関連しています。妊娠高血圧腎症の病因については完全には解明されておらず、出産以外にこの病気を根本的に治す方法は知られていません。しかし、最近、妊娠中のビタミンD濃度と妊娠高血圧腎症のリスクとの関連性に注目が集まっており、ビタミンDが胎盤形成、免疫系、血管新生に有益な役割を果たすことが示唆されています。

ビタミンDと妊娠高血圧腎症との関連に関する既存のシステマティックレビューやメタアナリシスには、いくつかの重要な研究が含まれておらず、含まれた研究のほとんどは妊娠後期の女性を対象とするものであったことから、今回ご紹介するシステマティックレビューは、妊娠初期または中期におけるビタミンDレベルと妊娠高血圧腎症のリスクとの関連を明らかにすることを目的に行われました。

【方法】

妊娠初期および中期におけるビタミンD状態と妊娠高血圧腎症リスクとの関連を調べるため、PubMed、EMBASE、Cochrane library、Web of Scienceデータベースでの文献検索を行った(1990年1月から2021年7月まで)。逆分散法またはDerSimonian-Laird法のいずれかを用いてメタアナリシスを行った。

【結果】

合計25,530人の被験者を対象とした22の研究が解析の対象となった。ビタミンD不足または欠乏の女性は、ビタミンD充足の女性と比較して妊娠高血圧腎症の罹患率が高かった(OR_1.58, 95% CI 1.39-1.79)。ビタミンD欠乏の女性は、ビタミンD充足または不足の女性と比較して妊娠高血圧腎症の罹患率が高かった(OR_1.35, 95% CI 1.10-1.66)。ビタミンD不足の女性は、ビタミンD充足の女性と比較して妊娠高血圧腎症の罹患率が高かった(OR_1.44, 95% CI 1.24-1.66)。ビタミンD不足の女性は、ビタミンD充足の女性と比較して妊娠高血圧腎症の罹患率が高かった(OR_1.50, 95% CI 1.05-2.14)。ビタミンDの不足または欠乏は妊娠高血圧腎症のリスク増加と関連することが示唆された。

これらの結果について、研究者たちは「妊娠初期または中期におけるビタミンD補充がリスク修飾療法となる可能性」を提起しています。

論文情報

Vitamin D Levels in Early_and_Middle Pregnancy_and_Preeclampsia, a Systematic Review_and_Meta-Analysis

掲載誌:Nutrients. 2022 Feb 27;14(5):999. 掲載日:2022年2月27日